【レビュー】『Green Hell』Amazon 詰めちゃいました。
- 【Green Hellとは】
- 【ストーリーモード】
- 【習うより慣れろ、死んで慣れろ】
- 【リアル重視のユーザーインターフェース】
- 【ジャングルに適合しよう】
- 【密林サンドボックス(Green Heaven)状態?】
- 【相手は自然のサバイバルゲーム】
【Green Hellとは】
世界有数の先進国・日本で快適に、文明的に過ごしているそこの貴方!
過ごしやすいでしょう、便利でしょう、楽しいでしょう。
でも人間は物質的豊かさだけでは決して満たされません!
平和・幸福に過ごすことが出来るためと分かっていてもルールや義務に辟易する事はありませんか?
たまには文明を忘れ、野生溢れる大自然に戻ってみませんか?
とプロパガンダのように書いてみた。
今回レビューする『Green Hell』はポーランド『Creepy Jar』開発のアマゾンを舞台としたリアル系サバイバルゲーム。
聞き覚えのない会社だったので少し調べてみると『Techland』と『Flying Wild Hog』出身者が2015年に設立したゲームスタジオで、Green Hellはスタジオ処女作。
Techland社のメジャータイトルは『Dead Island』、『Dying Light』。
Flying Wild Hog社のメジャータイトルは『Shadow Worrior1,2』等、有名ソフトを手掛けているスタジオで期待増。
開発者インタビューで拘ったのはリアルさ、と豪語するだけあってグラフィックは勿論の事、ユーザーインターフェースやシステムも凝った仕様。
焚火をするにしても
1. 木の棒と枝を採取、火起こし機をクラフト
2. もう一度木の棒と枝を採取、薪を積み上げる
3. 火種(鳥の巣や乾燥した葉)を採取、摩擦熱で火種を作る。
4. 点火
※この時、スタミナが十分でないと火が付く前にバテてしまう。
と面倒くさいリアルな工程になっている。
『Come on…Come on…』と必死で火おこしに励む。スタミナが足りず失敗した時の悔しそうな『F〇CK!!』は必聴。
【ストーリーモード】
主人公ジェイク・ヒギンズはパートナーのニアと共に先住民(ヤブアフカ族)調査のため、南米の熱帯雨林を訪れる。
スポンサーから簡易宿泊施設が手配されており、まったりとキャンプをしつつ、基本的な薪火の作り方や包帯の作り方をこなしながらチュートリアルをこなしていく。
水、食料は豊富に備蓄されており、まだまだサバイバル要素は皆無。
ニアは原住民の言葉を解し、原住民同士の分裂の懸念があると心配しつつも交友を深めていく。
一方、ジェイクは別行動をしながら、漫然と日々は過ぎていく。
物語は唐突に32日後に暗転する。
ミアからのヘルプコールで原住民の村へ向かうジェイクは断片的な光景がフラッシュバックし、何者かに追われ逃亡した記憶だけを残したままザック一丁でジャングルに放り出されることに。
トランシーバーでミアと連絡は取れるものの、果たしてジェイクは無事、ミアとジャングルを脱出できるか?というのが大まかなストーリー。
ネタバレを避けるため、詳細は伏せるがストーリーを進めるにつれて何故、主人公の記憶は無くなったのか?ミアの不自然な言動、未開発のジャングルに残られた数々の建築物等、複線も張り巡らされ、最後まで飽きることなくプレイすることが出来ると思う。
(余談だが、『MAN vs. WILD』、『ザ・秘境生活』風にしてドキュメンタリー・ドラマ化してもなかなか良いのでは?)
ストーリーモードでは進行に伴い、缶詰やジュースといった文明的な食事も入手できるのでクリアもハードルが高いものではない。
先住民の伝統的な幻覚剤である『アヤワスカ』をキメて、記憶を取り戻していくのが大まかな流れ。実在する植物だが、日本では法律的に引っ掛かる代物らしいので興味のある方は自己責任でお願いします。
【習うより慣れろ、死んで慣れろ】
プレイヤーはサバイバル知識が皆無な状況で微塵も文明化されていないGreen Hell(緑の地獄)に叩きこまれる事になる。
序盤では一体何が食べられるのか、飲めるのか、病気になったらどうするのか全く分からない。
美味そうな植物を食べたら食中毒。嘔吐、栄養失調で飢餓死。
綺麗そうな川の水を飲めば寄生虫。栄養が吸い取られ衰弱死。
ジャングルを疾走していたらヘビに噛まれ熱発。解毒法もわからず病死。
小川で体を洗っていればエイに刺され熱発。解毒法がわからず病死。
好奇心で蟻塚に触れたら湿疹。正気(SAN値)が無くなり、発狂死。
『なんだ、このクソゲーは』と思ったそこの貴方。
この理不尽な自然の前から逃げ出さないで欲しい。
序盤は採取しても『不明な~』と用途不明アイテムがインベントリーを埋め尽くすこともあるだろう。
しかし、ゲームの進行に伴いサバイバル手帳も拡充されてくれば貴方はジャングルでどう立ち回るべきか自ずと理解できるだろう。
慣れてくれば蛮族との戦闘もジャングル生活に華を添えてくれる(?)だろう。
【リアル重視のユーザーインターフェース】
見ての通りインターフェースは実在のザックを介して操作することになる。
ポケットによって収納物が分けられているのだが、しかしザックがビミョーな、心許ないサイズなのだ。
元々サバイバルではなく、キャンプで快適に過ごす予定だったので仕方がないのだろうが。
資材、食料、武器の取捨選択を常に心掛け、ザックの管理をしなくてはならない。
怪我や病気は避けては通れないが傷の描写がまた痛ましい。
ヒルに血を吸われている図。これまたウネウネ蠢いていて妙にリアルでキモイ。これVRに対応してたら人はどんなリアクションするんだろか・・・
他ゲームにありがちな現在位置は表示されず、腕時計の緯度・経度から読み取る仕様。面倒くささが雰囲気づくりに一役買っている。
【ジャングルに適合しよう】
最初はジャングルに喰われる存在だったプレイヤーもストーリーモードが終わる頃にはジャングルで生き抜く術は十分に身についているはずだ。
状況に合わせ、最適な食料、治療法、武器を選びだせる。住めば都。
アイテム別の習熟度は設定されているものの、プレイヤーの知識がサバイバルでは一番重要だ。
時折、クロコダイル、蛮族(ワラハ族)、ピューマ、等の強敵と出くわす時もあるだろうが準備と知識さえあれば、などて恐るる事やある。
最初は緑の地獄に放り込まれたプレイヤーも知識が増えるにつれて目の前の光景がまるで宝の山に思えてくるだろう。
リクガメの甲羅は調理器具に、ウジムシは治療に、ハチミツを包帯に、・・・といった具合に意外な応用も効いたりするし、クラフト・アイテムも豊富に用意されいる。
【密林サンドボックス(Green Heaven)状態?】
ただ、1点だけわがままを言わせて貰えば当初は地獄に思えた熱帯雨林はプレイヤースキル向上で、ただの箱庭になってしまう点だ。
一度、生活拠点を設けてしまえれば、滅多な事が無くては破綻しないし、如何にして快適・便利を過ごすかに目的が入れ替わる。
サバイバルではなく密林サンドボックス(Green Heaven)状態。
雨が続けば河川の氾濫で地形が変化、乾季で雨が全く降らなくなる、暴風雨で寝処が台無しになる等、大自然の驚異に立ち向かう様をリアルタイムで表現できれば益々、長くプレイ出来る作品に仕上がっていただろう。
無論、気候や出現する動物等、多少のランダム要素はあるものの、オープンワールドゲームの宿命か、マップ自体は変化しないため早い話、飽きが早い。
こうした要素は困難である事100も承知だが、ゲームに慣れてくると環境変化が無い自然を相手にすることになり、どこか奇妙な感覚を覚えるようになるのが少し残念に思えた。
フリーモードにて。地ならしが終わり住居の設営取り組み中
【相手は自然のサバイバルゲーム】
サバイバルゲームというジャンルは裾野が広い。
ゾンビを題材としたサバイバルゲームが巷であれだけ出ているのが良い例だ。
最近ではPUBGやAPEXといったバトルロワイアル系、また極限環境で生き抜くThe Long Dark等、バリエーションに富んだ作品が多数展開されている。
そうした流行の中で『Green Hell』は敢えてリアルさ(=面倒くささにも繋がるのだが)を追求することでサバイバル・シミュレーターとしての完成度に拘った作品だ。
一言で言えば『Amazon、詰めちゃいました』
密林、滝、洞窟、水中洞窟、湖、滝壺といった多様なフィールドに無数の生物が生活している雰囲気、サウンド、グラフィックは見事の一言。
先述したインターフェースや仕様も相まってジャングルで生活する事の不自由さと文明の利便性を十二分に堪能できるだろう。
現実の世界をここまで落とし込んだサバイバルゲームは極めて希少。
最後に改めて。
世界有数の先進国・日本で快適に、文明的に過ごしているそこの貴方!
過ごしやすいでしょう、便利でしょう、楽しいでしょう。
でも人間は物質的豊かさだけでは決して満たされません!
平和・幸福に過ごすことが出来るためと分かっていてもルールや義務に辟易する事はありませんか?
たまには文明を忘れ、野生溢れる大自然に戻ってみませんか?
『Green Hell』はそんな貴方の願望を満たしてくれるでしょう!